その帽子屋の主人は言った。
「私は30年間帽子を売り続けている。帽子を見ればその人はどんな人生を歩んできたのか分かるのだ」
偶然ショーウィンドウの帽子が目にとまり、眺めていた時だった。この暑いのに・・・
果たして帽子だけで生計を立てられるものなのか?
確かにこれほどの種類の帽子を見たのは初めてである。こんなに種類が必要なものなのかとさえ思うほどである。
主人は続けて言った。
「帽子はその人の生き様を表すものだ。あんたも一人前になったらきっと帽子のことが分かるよ」
帽子専門店は数少ない。でもこのような専門店を必要としている人も確かにいるのだろう。それは私にも分かる。だが・・・
壁、棚一面に飾られた帽子、かなりの年季が入っているようである。もしかしてもう何十年もそこに掛かっているのかもしれない。
側にあったパナマハットを手にとって見た。そして被ってみた。なるほど素晴らしい被り心地である。
「これ、頂戴」
店の主人はにんまりしている。「被っていくかい?」
私は黙ってうなずいた。
店を出て私は思った。
なるほど。何だか自信に満ち溢れてきた。帽子ひとつで生き方は変わるのかもしれない。
その後、ビジネスは成功し私はその町を離れた。数年後偶然その町を通りかかった際その帽子屋の前を通りかかった。しかしそこにはもう帽子屋はなかった。
それに代わって安さを売りにしたカジュアルウェアの量販店があった。
私はパナマハットを目深に被り足早にその場を去った。
![]() | ユー・ガット・メール メグ・ライアン (2003/12/06) ワーナー・ホーム・ビデオ この商品の詳細を見る |
Author:ひまじん